"完集"の難易度は? (1)

 「三つ子の魂百まで」とはよく言ったもので、人の性格や嗜好はなかなか変わるものではありません。私は幼いころからどちらかと言えば完璧主義で、何事もきっちりとしたいという性格です。古銭の収集において、その性格が如実に表れるのが"完集"です。いつも目標を定め、ついつい出来もしない"完集"を目指していました。しかし、完集は、私だけではなく大半の収集家にとって、大きな目標であり夢であることは間違いないと思います。もちろんすべての古銭を完集することなど不可能ですから、人はある程度身近な目標を立て、完集を目指すわけです。今回は古金銀に焦点を当て、完集の難易度を考えてみたいと思います。その際、細かい手替わりなどは考えないものとします。

 完集難易度をアルファベットで表します。

Aランク : 完集はまず不可能と思われる。

B1ランク : 金銭的に庶民には非常に難しいと思われる。 B2ランク : 希少性ために非常に難しいと思われる。

Cランク : 完集は可能だが、かなりの年月を必要とする。

Dランク : そこそこの努力で完集は可能である。

 ①天保一分銀(本座)の完集・・・Cランク

天保一分銀(本座)の完集を目指す上で、解決しておかなければならない問題はTqは本座か?という問題です。浅井晋吾氏や日本貨幣商協同組合は本座と考え、日本貨幣商協同組合鑑定書が付随しているTqもありますが、別座と判断される方も多いです。ここではTqは別座と考え、本座から外すこととします。だとすると、最難獲品はStとRsということになります。Stは100万円前後、Rsは50万円前後です。それなりの金額ですが、無理をすれば庶民にも何とかなる金額です。Stは滅多に見られない天保一分銀最高の珍品ですが、最近銀座コインのオークションにも出品されました。Rsは稀にヤフオクでも出品されますので、入手は可能です。Zrもなかなかの難獲品ですが、時間をかければなんとかなります。収集品の状態を美品程度とすれば、完集の難易度はCランクではないでしょうか。天保一分銀(本座)を未使用品で完集することは間違いなくAランクです。

 ②安政一分銀(本座)の完集・・・Cランク

安政一分銀(本座)の完集を目指す上で最大の関門は表Z型です。表Z型を除く49種類の完集でしたら、美品程度ならDランク、未使用品でもCランクだと思います。ところが表Zを含めるとかなり話が違ってきます。ZbとZe、ZaとZdの4種類は美品程度なら3万円~4万円程度で比較的容易に入手可能です。私も準未使用品のZd(MS64程度か?)を現在PCGSへ送っております。あと3か月くらいで戻って来ると思いますので御期待下さい(笑)。それはさておき、問題はZfとZcです。滅多に売り物が無く、入手困難ですが可能性はあるので、安政一分銀(本座)の完集は、美品程度なCランク、未使用品はB2ランクだと思います。

 ③玉一玉座一分銀の完集・・・Cランク

玉一玉座一分銀は全部で12種類で、美品程度なら全て入手可能なのでCランクです。ただ、1枚1枚がそれなりに希少なので時間はかかると思います。未使用品での完集はB2ランクだと思います。

 ④入分玉座一分銀の完集・・・Aランク

入分玉座一分銀の完集は極めて困難で、まず不可能と思われます。『新・一分銀分類譜』によると、Aa,Ae,Af,Ag,Fa,Ff,Fg,Ga,Ge,Gf,Gg,Ia,If,Ma,Mf,Mgの16種類となっています。表A・F・Gは容易に入手できます。Aeだけがやや希少ですが、ちょくちょく売り物もあり入手は可能です。問題は表IとMです。いずれも入手は極めて困難で、記載のIa,If,Ma,Mf,Mgの5枚を収集することだけでもほとんど不可能でしょう。それに加えて、入分玉座一分銀の完集を妨げるのがIgの発見です。御存知の方も多いと思いますが、最近東京のNコインが200万円で売り出したものです。私が知る限り現存1枚です。私も実物を見ましたが、間違いのない真正品です。もちろん、まだ出てくる可能性はありますが、入分玉座一分銀の完集はAランクだと思います。ちなみに、このIgをお持ちの方は入分玉座一分銀を完集されています。羨ましい限りです。(続く)