状態表示の統一

 古銭を集め始めて50年が過ぎました。古銭収集を取り巻く環境や考え方、評価の基準なども昔とはずいぶん違ってきました。

 さて、昔からずっと思っていることがあります。それは「コインの状態表示を統一できないか?」ということです。もちろん「一個人がどのような表現を使用するかまで制限できない」ことくらいは承知しています。が、せめて貨幣商協同組合に加盟している店やその店や組合が主催するオークションや入札誌では、「同じ表現を使用すること」ぐらいのことは出来るのではないでしょうか。

 『未使用-』と『準未使用』という表現が同じ入札誌に表記されていることがあります。どちらが状態が良いのでしょうか。『未使用-』とは、未使用には少し届かないことだと思うんですが、それを準未使用と言うんやないんかい、と思うわけです。また同じオークションの中で、『未使用~完未』と『未使用+』という2種類の表記を見かけることがあります。どちらが状態が良いのでしょうか。コインの状態は表と裏で若干異なる場合があることは承知していますが、『未使用から完未』は表(または裏)が未使用で裏(または表)が完未という意味なのか、全体的に未使用から完未の間くらいという意味なのか。もし後者なら、それを『未使用+』と言うのではないのか。謎は深まるばかりです。

 最近のコインの状態表記を見ると、かなり汚く(?)摩耗したコインでも"美品"です。よくあっても"上品"までで、"佳品"や"並品"という表示はほとんどなくなりました。『収集』誌の誌上入札くらいでしょうか、"佳品"や"並品"という文字が頻繁に見られるのは。かなり摩耗した、どう見ても"並品"やろ、と思われるものまでみんな"美品"で、なんか"美品"という表示がコインの状態表示の一番下に感じることさえあります。いくら状態評価は主観だと言っても、目に余るものもあります。ヤフオクなどでコインのことを知らない素人さんや悪意を持って意図的に表示している人は仕方ありませんが。

 話が少しそれました。是非コインの状態表示を統一して、明確にしてもらいたいわけです。私からの提案は、まず『-』はやめて、『+』だけにする。『完全未使用-』と『未使用+』、何が違うねんと思いませんか。否定的な『-』はやめて、次のような状態表記に統一しては如何でしょうか。コインの状態表示は、状態の良い順に

 

 ① 完全未使用品 ② 未使用品+ ③ 未使用品 ④ 極美品+ ⑤ 極美品 ⑥ 美品+ ⑦ 美品 ⑧ 佳品 ⑨ 並品   

 ⑩ 劣品   

 

の10段階とする。これ以外の表現は使用しない。

 もちろん、問題はいろいろ残ります。例えば銅貨のRDとRBはどうするのか。未使用品以上を名乗れるのはRDだけで、RBはたとえ未流通でも極美品+と表示するべきなのか。近代銭はともかく、古金銀もこの表示でいくのか。穴銭はどうするのか。さまざまな問題はあるでしょうが、とにかく、「貨幣商協同組合員は一定の表記以外は使用しない」と定めてはいかがでしょうか。もちろん、一個人がヤフオクなどでどのように表記するのかまでは規制できませんが、少しずつみんな同じ表現を使うようになっていくような気がします。一分銀の分類は、今では逆桜の位置をアルファベットで表示する方法を日本中共通して使用していますが、これはこばしがわ氏が提唱した方法がそれなりの年月をかけて浸透したものです。もちろん、あるコインをどのグレードに入れるかは人によって違うので、何かが根本的に良くなるわけではありませんが、少しはスッキリするような気がします。

 アメリカ人のよくわからない基準によって付けられたスラブの数字に囚われない日本独自の状態基準をしっかりと構築する必要があります。"状態表示の統一"は、その第一歩のように思います。