天保一分銀の表S型とは、皆さんも良く御存知の"跳分"です。昔から天保一分銀では人気のある書体ですが、何故か泉界は一分銀に限らず、"跳ね"書体が好きですね。今日は有名な表S型、いわゆる"跳分"について、お話ししたいと思います。
天保一分銀の表S型は、言うまでもなく、『分』が跳ねている書体です。全体的にやや大きい文字や小さい文字はありますが大差はなく、"大字""小字"と区別するほどの違いはないと思います。『分銀』の書体も、縦長書体や横広書体など、だいたい3種類くらいありますが、特に区別して収集するほどの差異はありません。『分』の跳ね方に差については後述したいと思います。
表S型に対する裏は、l、m、r、s、t の5種類が存在します。色々な手引書にその位付けがなされていますが、私なりに存在比率を予測してみました。もちろん統計学的に何の根拠もないのですが、表S型の天保一分銀が100枚あるとすると、lが65枚、rが20枚、sが13枚、mが2枚、tが0枚、ではないでしょうか。ほとんどの手引書ではrとsが同じ位付けですが、私の経験では、sの方がかなり少なく、特に状態の良いsは状態の良いrよりも圧倒的に少なく感じます。Ssの『分』の跳ねが小さい、と言われるのは状態の良いSsが少ないことと関係があるような気がします。rとsは、位付けでは1ランク違うと思います。
mは有名な"長柱座"です。"長柱座"には"大字"と"小字"が存在します。"小字"はあきらかに全体の文字が小さいですが、一番の特徴は突き抜けた縦棒の上部の爪ですね。"大字"はしっかりとした"爪"がありますが、"小字"にはほとんど"爪"はありません。"大字"と"小字"の存在比率は4:1くらいではないでしょうか。実際の価格差は余りありませんが、"小字"はかなり少なく、もう少し差があっても、と思います。"長柱座"はとても高価で人気がありますが、思っているよりは現存数は多いと思います。
最後が幻のtです。私は全ての本座の天保一分銀の中で、Stが一番少ないと思っています。多くの手引書ではRsと同格、または1ランク下に置かれていますが、私はRsの1ランク上だと思います。おそらく、多くの方が実物を御覧になったことがないのではないでしょうか。私も最近までStの実物を見たことはありませんでした。Stの『分』は極端に"跳ね"が小さく、よく見ないと跳ねているのかどうかわかりません。私が見たStもそうでした。このことと、Stの存在が極端に少ないことに関係があるのではないでしょうか。
Stを製作していた時、表Sの極印がかなり摩耗していたのではないか、ということです。Stを製作はしてみたものの、表Sの極印の磨耗が激しく、製作を途中で中断したか、製作したものを廃棄してしまったのではないか、という推測です。その中で、ほんの一部が現存しているのではないでしょうか。勝手な推測ですが、Stが" King of Tempo Ichibugin " であることは確かです。
次回は表T型について書きます。是非御覧下さい。
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