別座一分銀はやっぱり偽物

 ご存知のように、別座とは天保・安政だと幕府の銀座以外、明治だと太政官の貨幣司以外で製造された一分銀のことです。もちろん、収集家を騙すために近年作られた偽物とは歴史的意味が違いますが、私にとってはやっぱり"偽物"です。別座だとわかっていてそれらを収集されるのは自由です。書体や"定"刻印、品位などの研究に加え、新たな資料が発見されることにより、製造地(藩)が解明されれば天保銭のような収集分野ができそうですが、現時点で、多くのコンセンサスが得られた別座一分銀は無いようです。安政一分銀では別座の方が人気があり、価格も高い場合がしばしばあります。が、正式な幕府の銀座で、一定のルールのもとで製造された一分銀(いわゆる本座製)とは明確に区別されるべきものだと私は思っています。

 別座だと分かっている人たちが納得し、きちんとそれを明示して売り買いするのは何の問題もないのですが、結果として初心者を騙すようなことになってはいけない、と思うわけです。PCGSのスラブの中に、別座の一分銀、ちょくちょく見かけます。PCGSのスラブにはいっているんだから、本物(=本座)だと初心者が考えても無理はありません。PCGSの鑑定者たちはおそらく漢字は読めないので、本座の書体まではわかっていないはずです。だから、まあ、しょうがないですね。PCGSといえども、古金銀の鑑定においてはこんなものです。しかし、現時点では、組合は別座の一分銀に鑑定書を発行してはいけないし、プロのコイン商(貨幣商協同組合の会員ならなおさら)は通販サイトに別座の一分銀をさも本座の一分銀であるかのように掲載してはいけないんですよ。明治については、やや難しい問題(どの一分銀を太政官貨幣司製造の本座とするか)もありますが、天保と安政はちょっと勉強すれば、本座と別座の区別など一瞬でつきます。日本人なら、それもプロのコイン商なら区別できないはずはありませんから、わからなかった、では通りません。わからないのなら、鑑定書を発行してはいけないし、通販サイトで販売してはいけないのは明らかです。誰にでも専門分野があり、無知な分野はあります。当然です。ただプロとして、無知な分野の商品を扱ってはいけないのだと思っています。

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コメント: 2
  • #1

    えいさん (火曜日, 16 4月 2024 18:50)

    貴重なサイト誠にありがとうございます。
    当方コインの研究を初めてから50年以上になりますが大変参考になります。
    当方も別座は製作が雑で絵銭のような物と考えており、買う方が納得すれば良いとは思っておりますが、やはり売る側も、はっきりと「別座」(偽物または偽物に近い物)と記載する必要があると考えております。
    今後ともよろしくお願い致します。

  • #2

    明日香津五(店主) (火曜日, 16 4月 2024 21:42)

    当サイトを御覧頂き、誠にありがとうございます。これからも宜しくお願い致します。